大学は、高い教養と専門的能力を備えた人材を育成し、社会の発展に貢献する役割を担います。
しかし、近年の社会の変化のスピードと多様性に適切に対応するためには、限られたリソースの中、個々の大学の努力だけでは限界があり、複数の大学が連携することによって、相互に補完しあうことが必要です。
このような観点から、政府は、大学間連携の取り組みについて、さまざまな提言を行ってきました。
2005年 | 文部科学省 中央教育審議会答申 「我が国の高等教育の将来像」 |
コンソーシアム(共同事業体)形成支援の重要性が示される。 |
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2006年 | 教育基本法 改正 | 大学の役割として、社会貢献が明記される。 |
2007年 | 経済財政改革の基本方針2007 教育再生会議の第2次報告書 |
政府が大学間連携に財政的支援を行うという主旨の内容が盛り込まれる。 |
2008年 | 文部科学省 教育振興基本計画 | 高等教育に関する特に重点的な事項として、「大学教育」の質の向上・保証を推進することが盛り込まれる。 |
2008年に策定された「教育振興基本計画」を受けて、新たに実施されることになったのが、「戦略的大学連携支援事業」です。
「戦略的大学連携支援事業」は、大学間の連携の強化に向けて財政的な支援をするものです。個々の大学が相互に支援しあう環境の基盤作りをサポートすることを目的としています。
各大学の強みを持ち寄ることによって、「地域の知の拠点」を形成し、教育研究水準のさらなる高度化を図ることが可能になります。これらにより、地域のみならず、多くの効果が各方面にもたらされます。
2008年度は、54件、のべ344大学の事業が、 「戦略的大学連携支援事業」の選定、支援を受けることになりました。予算総額は30億円です。
- 総合的連携型(地元型)
- ... 1件あたり年間5000万円
- 総合的連携方(広域型)、教育研究高度化型
- ... 1件あたり年間1億円を上限に、3年間。
これらの事業の中で、特に地域と関わりが深いものの中には、地元企業や自治体からの協力を受けることも考えられます。
また、2009年度の予算額は、倍増の60億円となり、新たに35件程度が選定される予定です。
昨今の経済情勢の中、予算額が増加している点からも、いかに文部科学省がこの事業を重視していることがわかります。
「大学教育の質の向上・保証」のために、大学間連携を推進することは、大学経営の基盤を強化し、また学生や地域住民に対する高等教育機会を拡大することにつながります。大学が、地域の知の拠点として機能し、有意な人材を育成・輩出することは、社会の発展につながるでしょう。
大学間連携によって、各大学が優れた知的資源を持ち寄り、そのことを通じて、よりいっそう柔軟かつ高度な形で社会に貢献できるのです。
「戦略的大学連携支援事業」は、大学という「機関」を支援するのではなく、大学の社会貢献度を高める活動を支援するものです。